Lifestyle magazine
for modern family

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DATE 2018.07.13

第11回 山野・アンダーソン・陽子より
「美術館でダッシュで走っても誰からも怒られない」

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」と「ハハ」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。

山野・アンダーソン・陽子さんから長島有里枝さんへ。

 

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有里枝さんへ

 

こんにちは。お元気ですか?

私は無事、日本が蒸し暑くなる前にストックホルムに帰宅できました。こちらは、朝、10度になる日もあり、肌寒い日も続いています。先日の夏至祭の日は8度しかなく雨が降っていたにもかかわらず、友人宅で強制BBQをしました。これは毎年恒例で、「夏至だから!」と夏を感じるためにBBQ。意地でもやろうとするスウェーデン人たちを止めることができませんでした。それでも夏至を過ぎたらやっと夏らしくなってきました。今日は、晴天。28度で暑さに対応してないガラス工房内はさらに暑く、制作に支障が出るほどでした。

 

日本で有里枝さんにお会いできてとっても楽しかったです。会う前は緊張していたのですが、会ってしまったら不思議と緊張しませんでした。有里枝さんは思っていたよりも悔しいくらいに見た目がファンキーでした。でも、それがずるいほど似合っていました。それ以外は多少感じていた通り、とっても真面目で芯が通っていて、優しくて、シャイな人だな、と思いました。あとは、もっと論理的な人かと思っていたけど、実は情が深くてお茶目な人だな、という印象を受けました。かなり好きになってしまったのですが、堪えて当分はここでのやり取りに専念します(インスタは私もフォローさせてもらったので、少しだけ見させてもらっています)。

 

スウェーデンに帰ってきてから2〜3日、息子は保育園でスウェーデン語を話すのが恥ずかしいようでした。もう帰宅してからだいぶ経つので慣れたみたいですが、今までそんなこと一度もなかったので、感情が増えているな、と思いました。こちらで、改めて感じる子育ての環境の差は、子供の数が多いからなのか、周りが寛大だということです。みんな、夏だし気持ち的に余裕もあるのかな。美術館のような広いスペースに興奮して子供がダッシュしても、みんな微笑んでくれるし、美術館の人にピクリとも怒られないです。目くじらを立てている私を周りが白い目で見るので、叱るのをやめました。子供が電車の中で歌っても知らない人たちが拍手してくれたり、一緒に歌ってくれたりもします。こちらが歌うのをやめさせようとすると、そんな私を周りの人が止めてきます。広場の噴水にどこかの子供が食器洗剤を入れて泡だらけにしても「子供は頭がいいわ!」と、みんなとっても楽しそうです。子供の自転車ごと電車に乗れるし、バスにも乗れて、子供の自転車持参で小旅行もできます。世間の人みんなが子供たちに微笑んでいます。

何より、子供はほとんど叱られません。1歳にならないような子にはまず怒りませんし、「子供だからしょうがない」ということが基本です。正確に言うなら、親の叱り方が日本とは違うと思います。こちらでは、どんなに小さい子にも言い聞かせて説得しています。1歳半にならない子の目を見て、説得を試みる友人に笑いさえこみ上げますが、ぜっっったいに手を挙げません。つねりません。押しません。そんなことしたら通報されます。そういえば、妊娠中に産婦人科の問診で、自分が子供の時に家族から手を挙げられたことがあるか? という質問がありました。父に叩かれた経験もあり、祖母にホウキでつつかれたこともあったので、そのことを話すと、虐待経験ありで虐待する可能性があると書かれました。うっそーん! と思いましたが、みんな真面目に私を見ています。前に日本で私のパートナーが「心を痛めた」という出来事がありました。私のいとこの娘(2歳児)がティッシュを箱から全部出してしまったので、いとこが怒ってその子の手を1度パチーンと叩きました。それを見て、びっくりしたそうで、警察に通報しよう! と相談されました。彼からしたら、楽しく遊んでいるのに大人がそれを暴力でねじ伏せた、ということらしいです。スウェーデンに帰ってきてからも、友人たちにその話を何度もしていました。

スウェーデンでは子供を叱るとき、怒鳴ったりもしません。子供に怒鳴っている人を見たことないかもしれないです…。うーん、思い出す限り…ないですね(うわっ、私、いつか通報されるかも…)。それに、泣きっぱなしにもさせないです。泣きっぱなしにさせるのはちょっと虐待っぽい印象を受けます。必ず、説得、話し合いのもと、きちんと納得させるか落ち着くところに落ち着かせています。通報されるというのは、地域別にそういう機関が設けられているので、そこに連絡されるか、自分から連絡するようです。報告を受けた場合、指導員が子育ての仕方を指導しに自宅を訪問し、必要なら親への講習会も設けているのでそこへの参加を促します。こうして理にかなった説得を受けて、子供は論理的というか、社会を理解した子になります。子供がもう少し大きくなり、頭も良くなると、こういった子供達の権利を必要以上に利用しようとする場合もあるので、一概に良いことだけではないですが、今のところ、子供が生き生きして無意味に抑制されていない感じはします。

日本では、どうなんですか? 私たちが子供のときとは時代が違いますか? 有里枝さんは息子さんに手を上げたことはありますか?

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次回更新は7/27(金)の予定です。写真家の長島有里枝さんからのお返事です。