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for modern family

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DATE 2018.06.08

第9回 山野・アンダーソン・陽子より
「母の言葉に甘えてしまうが、葛藤してしまうこと」

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」と「ハハ」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。

山野・アンダーソン・陽子さんから長島有里枝さんへ。

 

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有里枝さんへ

 

こんにちは。

私は、今日、有里枝さんに会います。今回の分のお手紙を有里枝さんにお会いしてから書こうと思っていたのですが、今朝、急に今日のこの気持ちを書きたくなりまして、今、電車の中で小さなメモ帳へなぐり書きをしています。清澄白河から西ヶ原というところに行く途中です。私は朝から少しドキドキしていました。分量がわからないまま、普段はボサボサの髪の毛にクリームをつけました。“いつか“のために、と4〜5年前にストックホルムの蚤の市で見つけて手にしたイヤリングをつけることにしました。今日、はじめて付けます。私は普段より断然にオシャレして2回のミーティングを終えました。これからバラを見て、東日本橋の友達のカフェへ顔を出し、その後、いよいよ有里枝さんに会うのです。もっと早く落ち着いて書けばよかったのに、なぜ、今になって、これを書いているのか…少し後悔していますが、今にしかない気持ちがあるので、今回が私の順番でここに書けることをよかったな、とも思っています。顔の知らないペンフレンドに会うなんて、私の人生でもそうそうない機会だと思います。何しろ、今時ペンフレンドがいるなんて、私ってとっても幸せ者です。あ〜、でも、今更ですが、なんだか会うのがもったいなくなりました。ドキドキというかわくわくしていますが、私はスカしてそんな素振りは見せないかもしれません。隠せなくて言ってしまうかもしれません。その時の私はどうでしたか?

 

今日、息子は母にお願いしています。テレビでしか見たことのない「おたまじゃくし」や「アメンボ」を田んぼに見に行っているはずです。一昨日はキジを見かけたそうです。息子の日本での生活は、私の母と一緒に過ぎます。自転車をこぐ練習、朝夕は庭のお花にお水をあげ、親戚に会いに行ったり、養鶏場にたまごを買いに行ったり、トマト農園にトマトを買いに行ったりしているそうです。彼の日本語はますます、おばあさんの日本語になってきています。「私、困っちゃうわ。」とか「年寄りだからできないのよ。」は定型文として程よいタイミングで出てきます。パートナーのようにパーセンテージを気にせず、母に息子をお願いできるのは不思議な気分です。楽だな、と自分が親に甘える余裕がある時は思います。でも、母と少しでも喧嘩をするとスウェーデンのシステムのように今はどっちが見るべき時間だときちんとしている方が楽だな、と思うこともあります。ま、パートナーのいない日本では、100%親である私が世話をするべきなんですけどね。仕事のために日本に帰ってくることがほとんどで、息子を連れてこないで集中して10日間の日本出張にするか、少し長めにとって母に見てもらうか…の選択の中で母と相談して、1年に何回も一緒にいられないから3週間ぐらい見られるわよ、という言葉に甘え、その中で仕事がある時は息子をお願いすることにしています。それでも、理想と現実は違って喧嘩になることもあります。そんな時は決まって、次回は絶対に息子抜きで帰ってくるぞ、と思います。でも、次回が来るとまた母の言葉に甘えてしまいます。つい先日も些細なことですが、私へのイライラがたまった母が息子の前で私に文句を言いました。私が悔しい気持ちを堪えて、息子の手前、文句も言い返せず、素直ぶって「ごめんなさい」と言うのを聞いて、息子が「お母さん、大丈夫だよ。お月様が綺麗だよ。」と鈍い形の夕焼けに照らされた月を指して言いました。夏目漱石の翻訳の話を思い出し、「I love you」と言われている気分になって笑いました。次の日、息子が「昨日、おばあちゃんがお母さんのことを怒ったら、お月様が大丈夫だよって言って、お母さんが『ははは』って笑ったんだよね。」というもんだから、不安にさせてしまったのかな…と泣きそうになりました。ちゃんとしなきゃな〜、と思うけど、もはや何が「ちゃんと」なのかがわかりません。

 

日本に息子と2人で帰国すると、シングルで仕事もしていて子育てもして…って本当に大変だな、と実感します。勝手に息子を日本に連れてくることが息子にとってもいいことだと思っていますが、本当のところはよくわかりません。仕事がたまっている時なんかは息子を邪険にしてしまうこともあります。

日本にいると、なんとなく、ゆるいプレッシャーですが、子供は母親が見るべきだと社会に言われているような気がします。そして、女性は“優しさ”でこれを見ないようにしているのかな? 男の人がシングルで子育てをしていると「すごいね、えらいね」となんとなくですが社会が力をくれる気がします。違うかな? 有里枝さんはどう感じていますか? 息子さんが小さかった時はどうでしたか?

 

次回から、私は有里枝さんの顔を思い浮かべながら手紙を書くことになります。なんだか不思議です。

では、イヤリングを付けてそちらに向かいます。

 

山野陽子

 

追伸:IDEEに行ってくださってありがとうございました。そして、作品の写真!にくいですっ。

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次回更新は6/22(金)の予定です。写真家の長島有里枝さんからのお返事です。