Lifestyle magazine
for modern family

Lifestyle magazine
for modern family

DATE 2018.05.11

第7回 山野・アンダーソン・陽子より
「私の勝手な都合? それも“人生”というもの?」

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」と「ハハ」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。

山野・アンダーソン・陽子さんから長島有里枝さんへ。

 

──────

 

有里枝さんへ

 

 

定期的にお手紙をさせていただいているので、そんなことはないはずですが、なんだか久しぶりな気がします。お元気ですか? 私は無事、風邪をひかずに済みました。

 

こちらは4月30日に「Valborg」と言う春の祭のようなものがありました。実際は5〜6度の寒さですが、これを過ぎたら春ということになっています。ちなみに、日本語では「ヴァルプルギスの夜」って言うらしいです。聞いた事ありますか? ドイツ語からの名前らしいです。スウェーデンでは、春に備えて伐採された枝や、たまに家具なども一緒に燃やして焚き火をします。こちらではもう、カフェやレストラン、バーなどの公共の室内ではタバコを吸うことができないのですが、この日ばかりはコートが煙たくなって当時を思い出しました。

そして、焚き火が熱く、外が寒かったせいで息子は次の日、熱を出しました。

 

有里枝さんからお返事を頂いてから、家事を自分でするのは当然という考えが、どうしてみんなに浸透しているのか、友人たちにも聞いてみました。ある人は20年代からのフェミニズム運動を語り、ある人はキリスト教や宗教の話をし、またある人は政治的政策や社会主義の話をしてくれました。たくさんのいろんな意見がありました。そこで見えたのが、自由な情報により、自分の置かれた社会を客観視できるようになったことによって生まれた社会が作った考え方なのかな? ということです。それに、スウェーデン人は食事をしながらもでも、お散歩をしながらでも、そんな話ばかりしています。人と意見交換をすることを恐れず、いろいろな情報を得ようとします。そういうところから正当な権利という問題にもきちんと触れ、一人一人がきちんと向き合う努力をしているのだと思います。答えにはなっていないかもしれませんが、客観視できる世の中とタブーがない意見交換が時間をかけて今の家事の思想をみんなに浸透させたのかな? と思います。

 

それにしても、カンボジアの国際電話の話、1分360円も手伝って、ロマンチックでいられない状況が目に浮かびます。でも、とってもドラマチックですね。13〜4年前だとそうですよね。今ではSkypeもあるし、なんなら、EU内で携帯は無料通話ですし、時差もほとんどの国がないですし、あっても1時間なので、出張中でもEU内であれば電話は大歓迎です! ただ、悲しいことに、うちの息子は私の出張が多すぎて気にもとめてくれなくなりました。丸2日連絡がないので、どうしているかな? と思って電話をしても「今、粘土で遊んでいるから」とか、「テレビ見ているから」と言ってそっけなくあしらわれます。こっちが泣きたくなります。

息子に泣かれて困った経験で言えば、毎回恒例になっているのは、息子と日本に1ヶ月程いて、ストックホルムに帰って来た次の日からの3〜4日間の保育園は毎朝、保育園のフェンスにこれでもかと顔を食い込ませて日本語で「おか〜あさ〜ん、行かないで〜」と世界中に聞こえるぐらい大きな声で長いこと泣かれます。保育園から、「笑顔でサクッと去ってください」と言われるのですが、結構気になります。母国語って500m離れていても分かるのだな〜と関心すらします。私の勝手な都合もあり、息子を連れ回し、そして、再び日常に連れ戻す。申し訳ないと少し思いますが、「息子よ、これが人生!」とも少し思います……というより、本当はそう思うことによって私は悪いことをしてないぞ、と逃げているのかもしれないです。こんな時は決まって息子が寝た後に反省の念が押し寄せます。明日はちゃんと時間をかけ充分な情熱を持って向き合おうと思うのですが、次の日になるとたいした事が出来ずに過ぎます。

 

んー、なんでしょうね、丁寧にしていること……。今思いつくところでは、息子が怒ったり、イライラしたりした時には、そのはけ口を一緒に共有するようにしていることでしょうかね。そんな時はたいてい急に訪れます。もし、仕事をしていていてもパソコンを閉じて、一緒にその怒りを絵にしたり、粘土に無数の穴を開ける息子に拍手して声援を送ったり、クッションを持ってあげて息子がクッションを叩きやすくしたり、一緒にジャンプしたり、紙を丸めたり、破いたり……します。日本のお母さんから比べたら、どうしようもない母である私ですが、少しは考えているのです、と有里枝さんにお伝えしたかったのですが、なんか文章にすると乏しいですね。だいたいよく考えないと出てこないあたり、どうしょうもない。

 

あともう少しで日本に帰国します。お会いできるのを楽しみにしています。

 

山野陽子

──────

 

次回更新は5/25(金)の予定です。写真家の長島有里枝さんからのお返事です。