Lifestyle magazine
for modern family

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DATE 2018.02.10

第1回:山野・アンダーソン・陽子より
「スウェーデンの朝は息子の正しい防寒着選びから始まります」

女性は子どもを産むとみんな「はは」になる。当たり前のことだけど、みんなそれをどう受け入れ、日常を送り、自分の生き方を新たに手にするのでしょうか。この連載では、クリエイターとして活躍する二人の「はは」と「ハハ」に手紙をやりとりしていただきます。それぞれの悩みや愚痴、ときに葛藤、あるいは日々の喜びから、あなたや私の「はは」としての生き方のヒントがみつかるかもしれません。

山野・アンダーソン・陽子さんから長島有里枝さんへ。

 

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長島有里枝さん、はじめまして。
スウェーデンでガラスを作っている山野・アンダーソン・陽子と申します。無駄に長いと感じる時は山野A陽子と書きます。もしくは「A」までも省略して山野陽子とも書きます。
行ったり来たりしていますが、こちらの暮らしは2001年から始まりました。こんなに長くこの国にいるとは思いませんでしたが、すっかり居ついています。スウェーデンでの生活で聞いていただきたいことってつまり、ほぼ愚痴になりそうですが、ちょっとしたカルチャーショックを書かせていただければと思います。すっかりわからなくなってしまった日本のことや、長島さんのことを知るのも楽しみです。

 

スウェーデンには、「正しい服装をすれば、悪天候など存在しない」という格言が存在します。うそでしょ? と思うような天気でも子供を外で遊ばせます。毎日9時に、息子を保育園に送りますが、何が何でも外遊びから始まります。雨の日も、風の日も、雪の日も、マイナスの日も、晴れの日も、暑い日(と言っても28度ぐらいですが……)も、乾いた日も、湿った日も、何しろ、思い当たるありとあらゆる天候の中、まずは外で最低でも30分~1時間遊ばせることから始まります。丸1日一度も外に出ないことは絶対にありえません。ちなみに、土日に保育園がなくても、スウェーデン人は同じように子供を外で遊ばせます。

 

保育園に聞くと、1歳半にならない子供でマイナス10度なのに手袋をすぐに取ってしまうとか、正しい服装をするために支障がある場合を除いて、7時間半預けているうちの少なくとも4時間は外で遊んでいるようです。真冬の日照時間が短い時は外が暗くなると見えなくて危ないので、夕方早めに屋内へ入るとも聞きました。(でも、ちゃんとナイター用のランプがお庭にあります)。雨の日でも、3時のおやつのために近くの森へブルーベリーを摘みに行くこともありますし、みんなで手をつないで凍っている広場を見に行くこともあるようです。うちの息子は保育園一の食いしん坊なのですが、去年の11月、雪がうっすら積もるマイナス3度の中、2017年最後のブルーベリーを見つけたようです。その1個のために保育園総出で鼻水垂らしてブルーベリー探し。そして、迎えに行くとみんながその話で盛り上がり、迎えに行った旦那が帰宅してそれを私に伝えます。これぞ、「平和」ってやつです。

 

話が逸れましたが、どんな時でもその天候に合った服装をしていれば、元気に健康に野外を楽しむことができる術をこの国の人は知っています。そこで、問題なのが私です。あえて呼ばせてもらいますが「悪天候の中」、4時間も外で遊ぶことなんか覚えている限りほぼありませんので、どんな服装が正しいのか、ほぼほぼ見当がつきません。毎朝、保育園に送る前に限られた時間の中で否応なしに外の天気を確認します。天候を見て、気温を調べ、地面が濡れているか、凍っているか、乾いているか……、で、オーバーオールにするのか、その下にセーターを着せるのか、フリースのジャンパーを着せるのか、ウールのジャンパーを着せるのか、パーカーにするのか。または、普通のレインコートを着せるのか、内側がフリースになっているレインコートにするのか、レインコート素材のズボンにするのか、通気性はあるけど防水加工のズボンを外に履かせるのか……。どの靴にして、靴下は1枚でいいのか、ウールの靴下を上に履かせるのか……で、手袋は、グローブタイプ? ミトンタイプ? 素材は? ……という具合に頭の中がグルグルなります。関東人にマイナス気温の概念もほぼなく、雪も、湿った雪だの乾いた雪だの、降り方や積もり方でも色んな種類の雪があり、その都度、溶けやすい雪とこの気候なら雨を意識した格好をさせ、積もってサクサクとした雪ならそんなに濡れないのでなんならオーバーオール1枚でよかったり……。購入したけど、実は必要ないアイテムもあったりもします。間違えた服装だと、迎えに行った親が先生に注意されるだけならまだしも、もれなく子供が体調を崩す、そして仕事を先送り、というサイクルになります。

 

これに加え、息子が、風邪をひくこと間違いなしのペラッペラの赤いズボンがいいと言い出したりもします。そして、ひと悶着。また、オムツのとれた息子がトイレに行く際に脱がせやすいことも考えなくてはならなかったりもします。なんたって、外で遊んでいるので、先生にトイレに行きたいと伝えて、先生が手を引き、モコモコと二人で屋内へ。脱いで脱がして……間に合わず、オーバーオールごとぬれてしまうことも踏まえ、余分に替えの服一式全部用意しなくてはいけないという現状です。友人や先生にこういうのにした方がいいよ、と教えられ、結局なんだかんだ、それが一番実用的な正しい服装なので、みんなと同じものを手に取ります。みんな同じものをすすめるならば、間違ったものを持たなくていいので、制服として、保育園(もしくは、ストックホルム市)で全部用意してくれればいいのに、と思いますが、個性がなくなるからという理由で成立しない世の中です。個性とは何だと色々疑問は残りますが、生まれた時からその子の個性をとても大切にする社会が生んだ副作用と思えば、私の毎日の葛藤はそんなに大きな問題ではないのかもしれません。

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次回更新は2/23(金)の予定です。写真家の長島有里枝さんからのお返事です。