17『若草物語』ジョーのブラマンジェ

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今日は、アニメや映画にもなっている古典的名作をもう一度。

熱意と善意だけではどうにもならなかった午餐会のお料理

アニメや映画でもおなじみ『若草物語』は、19世紀中頃、南北戦争の時代を舞台にした児童文学の古典ですが、個性豊かな四姉妹の魅力は色あせることなく、21世紀の今読んでも、長女のメグや次女のジョー、もしくは三女のベス、あるいは末っ子のエイミーのなかに、自分と似ている部分を感じたり、知っている誰かの顔を重ねたりします。

物語は、従軍した父不在の一年間、母と姉妹たちの暮らしぶりと、日々の事件を通して姉妹たちが成長していく様子が綴られたもの。彼女たちの学びが、ただの教訓話にならず、物語として面白く仕上がっているのは、訳者曰く「作者オールコットのどこまでもあかるいユーモラスな才筆」(P.484)による登場人物の性格描写です。特に、一番の末っ子のエイミーのおかしさったら!

飼っていたカナリアを死なせてしまって嘆き悲しんでいるベスに「オーブンに入れてみたらどう。あたためれば生き返るかもよ。」(P. 235)と、大真面目に提案したり、綴りや句読点の打ち方を間違えて姉に怒られたことについて母宛の手紙で「いろいろすることがあるのでしかたありません。」(P.354)と開き直ったり。作者自身も四姉妹だったそうですから、実際にあったエピソードが反映されているのでしょう、エイミーの言動は、まさに「末っ子あるある」のオンパレードです。

四姉妹の母も素敵です。娘たちに、体験させて実感させてから、語り合う姿がしばしば登場します。あるときには、「やらなきゃならないことは何もしない、好きなことだけするお休み」という一週間を設けます。「……遊びづめで働かないっていうのは、働きづめで遊べないっていうのとおなじくらい、つまらないものだってわかることと、私は思うけど。」(P. 226)と言いながら母は、一週間の最後には、家政婦のハンナにもお休みを出し、こんなふうに自分も出かけてしまいます。

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「いるものは何なりと買って、いちいちわずらわせないでね。母さまは外でお食事するので、うちのことにはかまっていられないのよ。」というのが、ジョーに対するマーチ夫人の返事でした。「私だって、好きで家事やってるわけじゃありませんよ。今日は一日お休みをとって、本読んだり、お手紙書いたり、お友だちのところへ行ったり、たのしくすごすつもりよ。」(P. 234)

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この母業ストライキがとどめとなり、誰も働かない家の中はしっちゃかめっちゃか。お母さんの作戦は成功し、お休みに飽きていた娘たちは、日々ちゃんと働くことの大切さを実感するのです。

この時、特に悲惨だったのがジョー。お客さんをランチに招き奮闘したものの、読むだにまずそうな料理のオンパレードを生み出します。料理の失敗といえば『赤毛のアン』でアンもやらかしていましたが、ふたりの少女の姿は、「みんな失敗しながら大人になるんだよね」ということを思い出させてくれます(大人になると自分が子どもの頃の失敗を忘れがちですから)。

このときのメニューのひとつが、ブラマンジェ。21世紀のジョーのために、失敗しにくいレシピをご紹介しますので、ぶつぶつのない、つるんとなめらかな舌触りを楽しんでください。

『若草物語』L・M・オールコット著、矢川澄子訳(福音館書店)「プレゼントのないクリスマスなんて、クリスマスっていえるかねえ。」という次女ジョーの一言から始まる物語は、従軍で父の不在中の母と四人姉妹の日々を綴った一年間。このジョーのセリフのあとに「貧乏っておそろしいことね。」という長女メグのセリフが続きますが、貧しくとも、いかにして幸せを感じるか、豊かに暮らすかということを、姉妹たちは学んでいきます。表紙絵と挿絵は、そのライフスタイルに多くのファンを持つ、画家ターシャ・チューダーによるもの。彼女は現代において若草物語の時代の「自給自足の豊かな暮らし」を実践した人でした。

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