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DATE 2018.04.20

33 『いやいやえん』山からきたお友だちのお弁当

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今日は30人の子どもたちが通う「ちゅーりっぷほいくえん」のおはなしです。

子どもたちはいたずらも遊ぶのも駄々をこねるのもいつも一生懸命

「ちゅーりっぷほいくえんには、子どもが三十人います。その中の十八人は、ほしぐみ、十二人は、ばらぐみです。ほしぐみというのは、らいねん、がっこうへいくくみですから、みんないばっています」(P.1)と始まるのは、真っ赤な表紙が印象的な本『いやいやえん』です。

主人公はしげる、4歳。ちゅーりっぷほいくえんのばらぐみで、よく先生との約束を忘れてものおきに入れられてそうになっている、ふつうのやんちゃな男の子です。この本には、そんなしげるのちゅーりっぷほいくえんでの日々のおはなしが、7つ収められています。

この本のページをめくるのが楽しい理由は、ふたつあります。ひとつは、各ページに添えられている挿絵。子どもたちや登場人物が表情豊かにのびのびと動きまわっている絵を追いかけて行くだけでも、おはなしの世界を堪能できちゃいます。この絵を手がけているのは、著者の中川李枝子さんとのコンビで『ぐりとぐら』シリーズも生み出した大村百合子さん。このおふたり、実の姉妹だそう。あるインタビューでおふたりが子ども時代を振り返っていらっしゃったのですが、とにかく楽しそうに思い出話をされているのが印象的で、おはなしと絵がぴったり寄りそっているのは、ふたりが同じ子ども時代を過ごし、一緒に空想力や想像力を培ってきたからなのかもしれないな、と思います。

もうひとつの魅力は、もちろんおはなしです。つみきで作った船でくじらとりにでかけたり、子どもたちを食べようとしたおおかみと対決したり、黒い山で鬼の男の子とおしゃべりしたり……というと、ファンタジーの世界が描かれているのかと思うかもしれませんが、その中に描かれているしげるや子どもたちの言動は、目の前で繰り広げられているかのようにリアルな手触りが感じられて、それが面白いのです。著者の中川李枝子さんは保育園の先生だったそうで、その経験がお話に描かれる「かわいいだけじゃなく時に憎たらしくでもまっすぐ何事にも懸命な子どもたち」の姿に生きているのかもしれません。

大人になって読むと、しげるのやんちゃに全く動じず一枚上手な対応をするおかあさんや、はるのせんせいも魅力的。たとえば、はるのせんせいが「ほいくえんにいってもいいですか?」とお手紙をもらい「どうぞいらっしゃい」と呼んだ〝やまのこぐ〟ちゃんが、実は子ぐまだったことがわかった時。はるのせんせいはびっくりしながらもやさしく迎えてくれます。

***

「まあ。子ぐまのこぐちゃんだったの。」

はるのせんせいは、こぐのあたまを、なでました。

「おてがみ、じょうずね。」

「うん、はるのせんせいも、おてがみじょうずだね。」

「おかあさんに、おくってきていただいたの?」

「いいえ、ひとりできたの。ままは、とても大きいから、ほいくえんにはいれないでしょう。」

「こぐちゃんは、おりこうね。」

こぐは、ほめられてうれしくなりました。(P.78-79)

***

なんだか、読んでいるとはるのせんせいの大きなハートに触れ、こぐちゃんといっしょに胸の中がぐっとあったかくなる気がします。

さて、今日はこの転入生のこぐちゃんのお弁当からおいしいおにぎりをご紹介。「こぐの、おにぎりは、ささでくるんであって、ごはんのなかに、くるみと、どんぐりのほしたのが、はいっていました」(P. 80)というこぐちゃんのママのおにぎりを参考に、木の実のかわりにピーナッツを入れた炊き込みご飯のおにぎりです。こぐちゃんのおにぎりと交換したらきっと「きみのおにぎりもおいしいね。」と言ってくれるおいしさですよ。

『いやいやえん』中川李枝子著、大村百合子絵(福音館書店)ちゅーりっぷほいくえんに通うしげる。毎日お友だちとほいくえんでいろいろなことをして過ごしています。子ぐまや鬼の子どもと仲良くなったり、あれもイヤこれもイヤとあばれていやいやえんに行かされたり、ダメと言われていることをしてイタイメにあって反省したりもします。笑ったり泣いたりワガママを言ったりしながら、ひとつひとつに一生懸命な子どもたちの姿が魅力的なおはなしです。