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DATE 2018.02.23

30『二年間の休暇』無人島でのおいしそうな日々

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今回は、無人島で2年間を過ごした15人の少年たちの冒険物語。

少年たちのサイバイバルライフを味わう

映画好きで冒険物語好きの父の影響で、子どもの頃には当時の劇場公開作品だけでなく、『海底二万マイル』(1954年)や『八十日間世界一周』(1956年)など、古い冒険映画もよく観ました。特に『海底二万マイル』のノーチラス号とネモ船長が好きで、のちに同じ小説を元にしたテレビアニメ『ふしぎの海のナディア』(1990-1991年)にもどんハマりしたものでした(余談ですが、この作品を手がけたのは、『シン・ゴジラ』の庵野秀明監督と樋口真嗣監督コンビ)。
これらの作品の原作者は、ジュール・ヴェルヌ。本人にも冒険好きの血が流れていたようで、少年の頃に船にもぐりこんで見習い水夫になろうとしたそうですが、父に見つかって「冒険はもう夢の中でしかしません」と言ったとか言わなかったとか……真偽のほどは分かりませんが、実際、彼の想像力からは、海底旅行とか月旅行とか世界一周とか、150年も前に書かれたとは思えない超時代的な数々の冒険物語が生まれたわけです。

そんなヴェルヌが唯一、子ども向けとして書いた作品が『二年間の休暇』です。『十五少年漂流記』というタイトルでもおなじみのこの物語は、夏休みの航海のために乗り込んだ船が遭難し、無人島に流れ着いた15人の子どもたちのサバイバルの物語。その2年という長さのとおり本も分厚く、読み応えがありますが、どのシーンも臨場感にあふれ、読み始めるとページをめくる手が止まりません。
夢中になったのは、少年たちが無人島での生活を作りあげていくところ。物語の冒頭に15人の少年たちの個性が紹介されているのですが、その個性を活かしてそれぞれが役割を果たしながら、少年たちは未知の無人島を探検し、発見し、思いつき、挑戦して行きます。特に興味をそそられたのが、少年たちが島で調達する食の数々。なかなかに充実しているんです。タラやサケなどの魚、野生の名前を聞いたこともない鳥獣、終盤には植物性ミルクがとれる「牛の木」なるものも登場します(訳注によると、食用として適しているかは不明とのこと)。

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冬ごもりのための切実な食糧問題を考えて、ドニファンたちは、狩りを引き受けた。毎日、かれらは、落とし穴、わなを見張った。とった獲物は全部食べてしまわないで、モコがいつものとおり、塩づけにしたり、くんせいにしたりして、倉庫を豊かにした。こうしておけば、冬がどんなに長く、どんなにきびしくても、食糧の心配はないだろう。(P.285)
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これらに加えて、植物の知識の豊富なゴードンが、森でメープルシロップがとれるサトウカエデやお茶の代わりになるという灌木や、リキュールの原料になる豆などを発見します。塩は船にあったものだけでなく、海水で作ったりもしています。そういったサバイバルの様子と、動植物の名前や気象状況などの細かな描写が、この物語をノンフィクションのようにも感じさせ、読む人を惹きつけるのです。
しかし、彼らの食、充実はしているのですが、明らかに野菜不足! 船の荷物には、缶詰もけっこう残っていたようですから、こんな簡単でおいしいトマトスープもおすすめしたい。物語の中に入ってレシピをお届けするついでに無人島生活も体験できれば……しかし、現代人の私が行っても、彼ら150年前の10代の少年たちには、何の役にも立たなそうです。

『二年間の休暇』ジュール・ヴェルヌ著、朝倉剛訳(福音館書店)物語はヨット・スラウギ号が嵐の中でもみくちゃにされる様子から始まります。そしてその船に乗っているのは最年長14才、最年少8才の少年ばかり……年長の少年たちの活躍でなんとか無人島に流れ着きます。そのサバイバルライフは、友情物語や手に汗握る活劇に彩られ、時代を超えて楽しめる冒険物語です。