27『森は生きている』寒い冬の森から帰ってきたら焼きたてパイを

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今日のおはなしは寒い寒いロシアの冬の森で起きた不思議な物語を、戯曲で。

登場人物に扮しながら楽しむおはなし

すっかり寒くなってきたので、あたたかい部屋で読みたい冬のおはなしを紹介しようと考えていたら、ふと、目に入ったタイトルが『森は生きている』。「あぁこれ、小学生の時に学校でこの劇をやったような気がするなあ」と思いながら、久しぶりにページをめくり目で文字を追っていると、「ああ、やっぱりこのセリフに覚えがある!」と、読みながら同時に頭の中に記憶が蘇ってきました。

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ころがれ、ころがれ、指輪よ

春のげんかん口へ

夏の軒場へ

秋のたかどのへ

冬のじゅうたんの上を

新しい年のたき火をさして(P.92-93、P.199)

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『森は生きている』は、ロシアの子ども向けの戯曲です。まま母とまま姉にいじめられている主人公の女の子が、苦難を乗り越えて最後に幸せを得る物語で、あとがきに訳者が書いているように、いわばロシア版シンデレラといったおはなし。本家のシンデレラとは違って、魔法使いは出てこなくて、代わりに12ヶ月の精たちが登場します。

1年間の12ヶ月を司る精霊たちは、3月、4月、5月の3人が少年、6月、7月、8月の3人が青年、9月、10月、11月の3人が中年、そして、12月、1月、2月の3人が老人です。彼らは大晦日に森の奥に集まって大きな焚き火を囲んでいたところ、マツユキソウを探すために冬の森をさまよっていた女の子と出会います。しかし、大晦日の凍った森に春に咲くマツユキソウが咲くわけがありません。そこで1月、2月、3月の精たちは、1時間だけ4月の精に順番を譲り、彼女を助けるために森に春をもたらす……というのが前半のクライマックス。

そういえば、この4月の精はこのロシア版シンデレラの王子様的存在です。彼が、女の子を助けようと兄弟の精たちにお願いし、マツユキソウが咲くように森を自分の月に変えたのですから。そして、別れ際には指輪を贈り、困った時にはこの指輪を投げて唱えるように、と教えたのが、冒頭の魔法の言葉でした。

この魔法の言葉が記憶に刻まれていたのは、やっぱりセリフとして身体で覚えたからなのかもしれません。改めて読んでも、読みながらも頭の中にセリフが響き、自分があるいは誰かが、それぞれの役を「演じて」いるような気がしてくる、戯曲としてのおはなしの楽しみ方を発見しました(この役柄はあの人、と勝手にキャスティングしながら読んでも面白いかもしれません……!)。

「そら、熱いパイをお食べよ。(ペチカからパイをのせた鉄板をひきだす)ぽっぽと湯気がたっているよ、シューシュー音がしているよ。まるでものをいっているようだよ。」(P.54)と、まま母が自分の娘(まま姉)にパイをすすめる様子を読んだときなんて、2人の憎たらしさに憤慨しながらも、自分にパイがすすめられたような気がして、その焼きたてのパイの中身はなに〜?と、想像がふくらみ、そのおいしそうな匂いを鼻の中に感じるのです。

『森は生きている』(サムイル・マルシャーク著、湯浅芳子訳)大晦日のロシアの深い森の中、女の子が寒そうに何かを探しています。幼い女王さまの「マツユキソウが欲しいから、持って来たらそのカゴに金貨をいっぱいに与える」というワガママなおふれのために、まま母とまま姉に森にやられたのです。森の中で焚き火をしていた12の月の精霊に助けられ、無事にマツユキソウを摘んで帰るのですが、今度は女王様が森へ行って自分で摘みたいと言い出し……。まま母娘、ワガママ女王様とそれに振り回される宮廷の人々など、それぞれのセリフでおはなしがすすめられていく戯曲です。

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