26『ライオンと魔女』エドマンドを惑わせた魔女のおやつ

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。『ライオンと魔女』にはおいしそうなものがたくさん登場しますが、エドマンドが食べたのは……!?

魔女がくれるおいしいものにはご用心

魔法の国に行ってみたい、言葉を話す動物たちや魔法使いに会ってみたい。子どもの頃のそういう願いを叶えてくれたのは、たくさんの本でした。豊かな言葉で描かれた魔法の国の様子やできごとは、読み進めるにつれ頭の中で立体になり色づき、さらには匂いや味や温度を持ちました。そこで暮らす動物たちや魔法使いは、いわば古い友達といった感じで、大人になってからページを開くと、「久しぶり」と物語の世界に迎え入れてくれます。『ライオンと魔女』の登場人物たちもそんな古い友人たちであり、かつて覗かせてもらった彼らの世界は今も色鮮やかに記憶されています。

「ナルニア国ものがたり」の最初のおはなしである『ライオンと魔女』は、古い大きなたんすを通ってナルニア国にやってきたピーター、スーザン、エドマンドにルーシィの兄弟4人が、魔女の魔法で冬に閉ざされたナルニアの救世主として、偉大なライオン、アスランとともに魔女に立ち向かう物語。その4人の冒険物語を追いかけながら、ナルニアの住人のことやその暮らしを知るのが楽しくて、ページをめくったものでした。

たとえば、ルーシィが最初に出会ったナルニアの住人であるフォーンのタムナスさんのお宅は、いかにも若い一人暮らしの男性の趣味人の家、という感じのどっさり本のある居心地の良いすてきなインテリア。一方、ビーバー夫妻のおうちは、ミシンや工具など生活の道具が並ぶ質素ながら気持ち良い空間。その暮らしぶりのとおり、ビーバー夫妻はまじめで前向きな信念の人。4人を奮い立たせてアスランの元へ導いていきます。

そんなふうにその暮らしぶりや、話し方、行動によって、登場するナルニアの住人たちは個性豊かに描かれ、読む人の心にくっきりとその存在を残すのです。

そんな個性豊かなナルニアの住人のなかでも、偉大なライオン、アスランの存在感は別格です。アスランは、そんなに多くを語りません。それでも、やはり偉大なライオンは、4人の子どもたちにも、読み手の子どもたちにも、特別な力を与えることができます。兄弟を裏切って魔女の方に行ってしまったエドマンドが無事に戻ってきた朝、アスランが兄弟たちと向き合う様子は、短いけれど深く心に残るシーンのひとつです。

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……アスランとエドマンドが、ほかの者たちとはなれて、露のおりた草の上をいっしょに歩いているすがたを見ました。アスランが何を話したかは、みなさんにお話しするひつようがないでしょう。それに、ほかにはきいた者もいないのです。ただそれは、エドマンドが忘れることのできない会話でした。ほかの子たちがちかづいてくると、アスランは、エドマンドをつれて、そちらをむかえました。
「きょうだいがもどってきた。もう、すぎたことを話すひつようはないぞ。」とアスランがみんなにいいました。(P.191-192)

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じつは、エドマンドが兄弟を裏切ることになってしまったのは、魔女の食べ物を食べてしまったからでした。初めて魔女に会った時、好きなものを聞かれてエドマンドが答えたのはプリン。それをきいた白い魔女は雪に魔法のひとしずくをたらり、するとどこからともなくぎっしりプリンが詰まった箱が現れたんだそう。今まで食べたことのないほどおいしいプリン、食べれば食べるほど食べたくなってしまうし、もし食べたいだけ食べると……。ああ、どのおはなしでも、悪い魔女のくれる食べ物はおそろしいワナです。

今日は、魔法は使わず、卵と牛乳で小さなプリンを作りました。魔女の食べ物ではないので、ひとりでいくつ食べてもおそろしいことにはならないけれど、家族や友達と仲良く分けて食べれば、きっとおいしさがぐっと増しますよ。

『ライオンと魔女』C・S・ルイス著、瀬田貞二訳(岩波書店)ナルニア国ものがたりのシリーズ1作目。まずはじめに一番末のルーシィが、そのつぎに3番目のエドマンドが、そしてついに兄のピーターと姉のスーザンも一緒に、ナルニアに足を踏み入れます。白い魔女の魔法で、冬に閉ざされ続けているナルニアには、言い伝えがありました。4人の人間の子どもが、偉大なライオン・アスランとともに、悪い魔法の時代を終わらせるという……! 4人の子どもたちとアスランに率いられ、ナルニアはかつての暮らしを取り戻します。

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