Lifestyle magazine
for modern family
DATE 2017.09.29

25『点子ちゃんとアントン』お母さんのためのスクランブルエッグ

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今日は、ちょっと変わり者の女の子と料理ができるしっかり者の男の子が活躍する物語。

誰かのために料理する男の子ってカッコイイ

「点子ちゃんって、ヘンな名前!」

と、最初に興味をひかれたのは、そのタイトルに登場する女の子の名前でした。そして、表紙に描かれた点子ちゃんとアントンの格好がかわいく、それを追いかけるダックスフント(読むと彼もまた、ピーフケという面白い響きの名前の持ち主でした)が気に入ってしまって、表紙をめくったのです。

以前もご紹介しましたが、エーリヒ・ケストナーの物語は、実に勇敢でカッコイイ子どもたちがいつも登場します。今回のふたりもまったくその通りなのですが、点子ちゃんについては、その名前の印象どおりちょっと風変わりな女の子で、読み進めるとそんな彼女にどんどん好感と憧れの気持ちを抱いていきます(子どもの頃って、そういう〝変わってる子〟に憧れる気持ちがありませんでした?)。たとえば、愛犬のピーフケをおおかみ役にして赤ずきんちゃんを部屋で上演してみたり、誰もいない居間で物乞いの練習をしていたり(これには深いワケがあるのですが)、あるいはアントンが髪を切りに行くのについていった点子ちゃんは……。

***

点子はピーフケを二ばんめのいすにのせて、じぶんのハンケチをいぬの首のまわりにまきつけ、シャボンのあわを鼻のまわりに塗りました。(中略)「まったく、だんな」と、点子はピーフケに言いました。「不景気ですな。指でこするのはこのくらいでよろしゅうござんすか……。(P.47-48)
***

と、犬のピーフケ相手に床屋さんの真似! その横で髪を切ってもらいながらアントンは、床屋さんに「あの女の子、すばらしかない?」(P.51)と誇らしげ。床屋さんは憤慨していますが、点子ファンの読者なら、アントンの意見に「そのとおり!」と大賛成です。

アントンにとって、彼女は自分とは違う大胆で面白い女の子。尊敬もしているし、憧れてもいるんだろうなと思うのです。そして、点子ちゃんもアントンのことを自分にはできないことができると尊敬して、憧れています。

実は、二人はそれぞれに悲しみを抱えています。二人の境遇はまったく違うけれど、それをものともせず、楽しく過ごそうと奮闘している子どもだということは一緒です。だからこその友情なのだし、そういう二人がうまいこと悪い大人をやっつけたり、困った大人の目を覚まさせたりして、最後に本当の楽しい幸せな時間を手に入れることができると、「本当によかったね!」と、すっかり二人のファンになってしまった読者は思うことでしょう。

さて、点子ちゃんができなくてアントンができることのひとつが、お料理。病気のお母さんのためにアントンが作ってあげた晩御飯のメニューは、「スクランブルエッグとじゃがいものゆでたの」。おはなしのなかで見せるアントンの料理の手際はなかなかに鮮やかで、お母さん曰く、前の日にはハンバーグも作ったそうです。なんてカッコイイな男の子なんでしょう! そんなアントンを助けるために、点子ちゃんが立ち上がって起こした行動もカッコイイんです。お料理ができなくても、点子ちゃんには、何も恐れない勇気とやさしさがあるのです。ヨッ、点子ちゃん! やっぱり憧れの女の子です。

『点子ちゃんとアントン』エーリッヒ・ケストナー著、高橋健二訳(岩波書店)ドイツのベルリンに暮らすルイーゼは、赤ちゃんの頃に小さかったので「点子ちゃん」と呼ばれています。今や立派な女の子になった点子ちゃん、でも両親は仕事に交際に忙しく……。でも、点子ちゃんには友達のアントンがいるから大丈夫。そして実は、点子ちゃんには両親に秘密がありました。そして、点子ちゃんのお家に危機が迫ります……!2人の活躍に注目!