19『クマのプーさん』プーの憧れのケーキ

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今日は、キャラクターとしても大人気、『クマのプーさん』のおはなしをご紹介。

クリストファー・ロビンが開いたプーを讃えるお茶の会

クマのプーさんはパディントンと並んで、世界的人気を誇るクマのひとりですが、そのルックスだけなく、本を読んでそのキャラクターを知れば、彼のユニークさと愛らしさにますますファンになってしまうでしょう。そして、もう一人の主人公、クリストファー・ロビンとプーの絆が愛おしく、時に心を打つのです。

実は、クリストファー・ロビンは著者ミルンの息子であり、このおはなしは、彼と仲良しのテディ・ベア・プーのために、父であるミルンが話してあげたおはなしなのです(おはなしのはじめの頃に、息子のクリストファー・ロビンがおはなしのクリストファー・ロビンについて、「これ、ぼく?」と訊くシーンがあります。「きみさ。」という答えを聞いた彼の反応が表されているのですが、その顔が眼に浮かぶようで、おはなしと日常が交差する、とても素敵な場面です)

おはなしの中で最も知られているのは、やっぱり「プーさん食べ過ぎで体がウサギの家の玄関の穴にはまってしまう」というエピソードでしょう。クリストファー・ロビンはその姿を見てまず「ばっかなクマのやつ!」と言いながらも、愛情深くプーのダイエットに付き合います。

またある時には、一緒に「北極(ノースポール)」を探しに探検に出かけます。出かけるにあたって長ぐつをはくのにも、二人は力を合わせます。大雨の中で、コブタを助けに行く時にも、二人は知恵を合わせます(余談ですが、プーからすばらしいアイデアが飛び出したときのクリストファー・ロビンの「……これがほんとに、あんなにながいあいだ、じぶんが知っていた、そして、かわいがっていた、あの頭のわるいクマなのかとおどろきながら、じっとプーをみつめるばかりでありました」(P. 169)という思いは、もしかしたら、親=ミルンが幼い我が子の成長に気づいたときの驚きと感動だったのかもしれませんね)。

現実のクリストファー・ロビンも、プーたちと、たくさんの冒険をして、一緒に笑ったのでしょう。誰もが子どもの頃にはそれぞれのプーを相棒に大切な時間を過ごしたのではないでしょうか。そんな時間がこのおはなしには閉じ込められています。だから、ページをひらけばいつでも、プーに会いに行くことができます。

おはなしの中で、クリストファー・ロビンもプーと約束するのです。

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「プー、ぼくのことわすれないって、約束しておくれよ。ぼくが百になっても。」

プーは、しばらくかんがえました。

「そうすると、ぼく、いくつだろ?」

「九十九。」

プーはうなずきました。

「ぼく、約束します。」と、プーはいいました。(P. 390)

***

クリストファー・ロビンにとって、プーさんは、かわいくて仕方ない大切なクマであり、尊敬できる友であり、自分自身の分身です。そんなプーのために、クリストファー・ロビンが開催したお茶の会から、今日のおいしいをご紹介します。クリストファー・ロビンに頼まれたフクロから、お茶会の案内を受けたプーさんが言ったのは、「桃色のお砂糖のついてる、あのケーキなんてもの、出るのかな。」(P. 174)。お茶会のメニューは書かれてはいませんが、プーさんの食べたいものをクリストファ-・ロビンはきっと用意してくれたはずです。きっとこんな、素朴でおいしい、「桃色のお砂糖のついている、あのケーキなんてもの」を。

『クマのプーさん/プー横町にたった家』A・A・ミルン著、石井桃子訳(岩波書店)愛らしいその姿がキャラクターとしても大人気のクマのプーさん。元々は、クリストファー・ロビンと階段を降りてきて、「すみませんけど、おとうさん、プーにひとつしてやってくれない?」とクリストファー・ロビンがおはなしをお願いしたことから始まった、くまのプーさんとその仲間たちの日々のおはなし。みんなのとんちんかんなやりとりが愛らしく、子ども時代の夢の世界に誘ってくれます。翻訳は、ブルーナの「うさこちゃん」シリーズでもおなじみ、石井桃子さん。あとがきに記された、登場人物たちのその後のエピソードも必読です。本はぜひ、装幀が美しい、ハードカバーを手にとってください。

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