10『モモ』飲めるチョコレートがあるなんて!

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。モモはホットチョコレートで元気を得て、時間どろぼうに立ち向かいます。

〈どこにもない家〉で食べたステキな朝ごはん

『モモ』には、長いサブタイトルがついています。どんな話? と訊かれたら、このサブタイトルがその答えになります。『時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語』です。

でも、時間どろぼうって誰なのか? 彼らはしゃれた灰色の車に乗った灰色ずくめの紳士です。たとえば床屋のフージーさんのところへやって来た時間どろぼうは、小さな灰色の葉巻をくゆらせながら、セールストークを始めます。フージーさんがこれまでに使ってきた時間を数字で表していくのです。「……それに週に一回、合唱団の練習に出て、週に二回、行きつけの飲み屋に行き……全部で一億六千五百五十六万四千秒……」と、趣味の時間や大切な人と過ごす時間を無駄なものと言い切り、そしてフージーさんが生きてきた42年間=1,324,512,000秒からそれらの時間の合計=1,324,512,000秒を差し引くと、残高は、0,000,000,000秒。フージーさんは愕然とします——。

このシーンを読んでいると、ぱっと把握できないほど桁の多い数字で表された時間はよそよそしくて、それは時間ではない別のものにも思えます。それでは時間とは何なのか。それについて、作者のエンデは物語の中でこんなふうに説明してくれています。

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時間をはかるにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。というのは、だれでも知っているとおり、その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ぎゃくにほんの一瞬と思えることもあるからです。

なぜなら、時間とはすなわち生活だからです。そして人間の生きる生活は、その人の心の中にあるからです。(P.75)

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しかし、ずらり並ぶ0を突きつける時間どろぼうにそそのかされ(よく考えれば、費やしてきた時間=生きてきた時間なので差し引き0になって当然なのですが)、人々は時間を倹約し始めます。「忙しいんだ」「また今度」とすっかり変わってしまった友達と彼らの時間を取り戻すために、主人公のモモは時間どろぼうに挑むのです。

こう説明すると寓意に満ちた難しいおはなしのように聞こえるかもしれませんが、そこには子どもたちとモモが空想の世界に遊んでいる様子、モモが時間の秘密を知った時の景色、モモを助けるカメのカシオペイアの活躍、手に汗にぎる時間どろぼうの追跡など、ワクワクするシーンがたくさん散りばめられ、読む人は物語に引き込まれていきます。

時間を司るマイスター・ホラの家でモモが食べる朝食もそのひとつ。モモの疲れを癒してくれるのは、金色のポットから注がれるホットチョコレートです。モモは「飲めるチョコレートがあるなんて」知らなかったわけですが、同じように「飲むチョコレートだって!?」と憧れた読者もたくさんいるのではないでしょうか。丁寧に作ったホットチョコレートは、寒い日に満ち足りた時間を届けてくれるはずです。

『モモ』M・エンデ著、大島かおり訳(岩波書店)ある日、町のはずれの円形劇場跡に住み始めた小さな女の子、モモ。お金持ちではないけれどやさしい町の人たちと不思議な女の子とののどかで豊かな日々の中に、静かに時間どろぼうが忍び寄ってきて……。時間どろぼうと時間の秘密を知ったモモは、大切な友達と彼らの時間を取り戻すために、カメのカシオペイアと時間どろぼうに挑みます。

ホットチョコレートの作り方(大きめカップ2つ分)

チョコレート(ビター)・・・50g
牛乳・・・400ml
カルダモン(ホール)・・・2個
シナモンスティック・・・1本

1)下準備。チョコレートは包丁で細かく刻んでおく。

2)スパイスを煮出す。小鍋に牛乳を100mlだけ入れ、カルダモンとぽきっと折ったシナモンスティックを加え、弱火にかけて香りを出す。

3)チョコレートを溶かす。2の鍋にチョコレートを入れ、木べらなどで丁寧に混ぜながらゆっくり溶かす。完全に溶けたら残りの牛乳を少しずつ加え、全体が温まったらできあがり。

POINT ちょっとスパイシーなレシピにしましたが、スパイスはお好みで。パウダー状のものを使う際はホールスパイスよりも香りにパンチがあるので入れ過ぎないように。牛乳を加えるとき、一気に加えるとだまになってしまうことがあるので、少しずつ、時間をかけて、ゆっくりな気分で作ってください。
Photograph: Shinsaku Kato
Food & Recipe: Kiyoe Yamasaki
Styling: Reiko Ogino
Edit & Text: Sachiko Kawase
DATE 2017.02.06
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2017.05.13(土) - 2017.05.13(土)
2017年5月13日(土)

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