09『雪わたり』きつねが作ったほっぺが落ちるほどおいしいきび団子

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今回は子ぎつねによるおもてなしの一品を。

わらべ歌にオノマトペ、声に出して読みながら

宮沢賢治の童話には、幻想的な風景がたくさん登場します。『銀河鉄道の夜』の夜空を駆ける列車の車窓、『やまなし』の蟹の親子が暮らすきらめく川の中、そして今回の『雪わたり』の雪原。

「雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑らかな青い石の板で出来ているらしいのです。」と、こんなふうに始まる物語では、雪におおわれた野山を舞台に、人間の子どもたちときつねの子どもたちとの交流が描かれます。

「堅雪かんこ、しみ雪しんこ。」わらべ歌を歌いながら雪原へ遊びにでかけた四郎とかん子の兄妹は、白い子ぎつねと出会います。「狐こんこん白狐、お嫁ほしけりゃ、とってやろうよ。」きつねをからかって四郎が歌うと、子ぎつねの紺三郎は「四郎はしんこ、かん子はかんこ、おらはお嫁はいらないよ。」と歌って返します。そして、きつねは人をだます、と思っていた子どもたちに、紺三郎は真面目に諭します。

***

四郎がおどろいて尋ねました。

「そいじゃきつねが人をだますなんて嘘かしら。」

紺三郎が熱心に云いました。

「嘘ですとも。けだし最もひどい嘘です。だまされたという人は大抵お酒に酔ったり、臆病でくるくるしたりした人です。」(P.8)

***

なるほど、紺三郎の言うのももっともかもしれません(大人になって読むといっそう、彼の指摘に耳が痛い……!)。

物語の中で兄妹やきつねたちが歌う「堅雪かんこ」の歌は、彼らのように替え歌したり、地域によって歌詞が変わったりしながら、岩手や青森のあたりに伝えられてきたわらべ歌だそう。読んでいると元の歌を知らなくてもその歌声が耳の奥から聞こえてくるような、素朴でリズムのよい言葉。声に出して読みたくなってしまいます。

他にも、この作品には声に出して読みたくなるような言葉が登場します。たとえば堅く凍った雪原を歩いたり踊ったりすると「キックキックトントン、キックキックトントン」と足元が鳴り、森の中の木の芽は「風に吹かれてピッカリピッカリと」、月夜の雪は「チカチカ青く」光ります。他にも「キラキラ」「パチパチ」などのおなじみのオノマトペもあちこちに織り交ぜられ、読んでいるとその手触りや音や色が自分が体験したことのように頭の中で再現されるのです。

自然の様子を描く独特のオノマトペは、他の宮沢賢治の物語にもたくさん見つかります。彼の自然に対する真摯なまなざしや自然を感じる力の豊かさが、そんな表現を生み出したのではないでしょうか。外あそびに出かけるときには、宮沢賢治の物語を読んで彼の言葉を胸においてから自然と触れてみると、見え方が違ってくるかもしれません。

さて、おはなしのクライマックスに登場するのが、きつねの子どもたちと人間の子どもたちの絆を確かなものにするきび団子。きつねの子どもたちが作ったそのきび団子は、ほっぺたも落ちそうなほどのおいしさだったそう。「きつねは人をだます」という偏見をなくそうと人の子どもをもてなした子ぎつねたちと、それを真っすぐに受け止めた四郎とかん子に拍手! そして、お話を読んだら、親子できびの入ったお団子を作って、そのもっちりと香ばしい風味を味わってみませんか。

『雪わたり』宮沢賢治著、小林敏也絵(好学社) 冬の晴れた日、四郎とかん子は凍って固くなった雪原をわらべ歌を歌いながら散歩へ。真っ白に輝く中を行くと、森の入り口で白いきつねの子に出会います。賢い子ぎつね紺三郎に対して四郎とかん子が心を開いて信頼関係を築いていくのに時間はかかりません。幻想的な情景の中で、異なる世界に住む人の子ときつねの子が素直な心で絆を結ぶおはなしです。

もちもちきび団子2種(1.5cmくらいのお団子20個くらい分)

もちきび入りだんご
 だんご粉・・・100g
 もちきび・・・大さじ2
 木綿豆腐・・・1/2丁程度

たかきび粉だんご
 たかきび粉・・・50g
 だんご粉・・・50g
 木綿豆腐・・・1/2丁程度

1)もちきび入りだんごを作る。もちきびを水から3分ほどゆでて、ざるにあげておく。ボウルにだんご粉を入れ豆腐を手でつぶしながら加え、すこし固めの耳たぶくらいになるまでこねる。ゆでたもちきびも加えて、均一に混ぜる。

2)たかきび粉だんごを作る。ボウルにたかきび粉とだんご粉を合わせ、豆腐を手でつぶしながら加えてこねながら、耳たぶくらいの固さになるまでこねる。

3)鍋にお湯をたっぷりわかし、1と2の生地を、1.5cmくらいにまるめてどんどん鍋に入れる。浮き上がってきたものから冷水にとり、水気を切る。お好みでおいしいあんこやきなこ、黒蜜などをまぶしていただく。

POINT 水のかわりに豆腐を使うと、時間が経っても固くなりにくいお団子になります。おやつで食べて余ったら、お味噌汁に加えても、ほうとうみたいでおいしいですよ。
Photograph: Shinsaku Kato
Food & Recipe: Kiyoe Yamasaki
Styling: Reiko Ogino
Edit & Text: Sachiko Kawase
DATE 2017.01.23
<
>
2017.05.13(土) - 2017.05.13(土)
2017年5月13日(土)

MilK JAPONの
iPhoneアプリが登場

マガジンと連動したスペシャルなARコンテンツが楽しめたり、
ウェブのイベント情報をいち早くお届けできるアプリです。

MilK JAPON #34
Spring-Summer 2017