08『長い冬』かあさんの工夫でびっくりおいしいパンプキンパイ

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今回は、アメリカの手作りの暮らしを味わって。

時代が変わっても変わらないもの

アメリカが今のようなカタチになる前はどんなだったのか? ということを知るヒントを探すなら、ローラ・インガルス・ワイルダーの「小さな家」シリーズを読んでみてはいかがでしょう? アメリカ西部開拓時代を舞台にした著者の自伝的物語で、主人公ローラの一家は農地を求めて開拓地を移住していきます。

この物語の魅力は、生き生きと描かれる開拓時代の暮らし。特にローラたちの暮らしを彩る手しごとの数々――ペチコートの裾につけるレース飾りやベッドをおおうキルト、親戚も集まって総出で作るソーセージや塩漬け豚、カエデの樹液を集めて作るメープルシュガー、とうさんがつくる家――に憧れを抱いて読んだ人は少なくないのではないでしょうか。

シリーズ6冊目の『長い冬』で描かれるのは、過酷な冬の暮らしです。ヶ月にも及ぶ寒波が訪れ、ローラたち一家は手に入れた農地の近くの町で冬を越すことに。しかし雪のため鉄道が止まり、日用品や食料の供給が途絶えてしまうのです。当たり前にあった便利な暮らしが滞り、食料も燃料も不足してしまった中で、とうさんとかあさんは、種小麦をコーヒーミルで挽いてパンを焼いたり、石炭や薪の代わりにわらをよって薪みたいな棒を作ったり、ボタンと端切れと機械油でランプを作ったり、次々と驚きの工夫を編み出します。

それでも、容赦なく吹雪は町をおおい、ローラはもうこの世界から春が消えてしまってしまったのではないかと絶望的な気分になります。すると、とうさんが言うのです。

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「いずれきっとやむんだ。しかし、わたしらは負けない。やられてたまるもんか。決してあきらめないぞ」

 それを聞いて、ローラの心はぽっと暖まった。ほんのぽっちりだけど、はっきりと暖かさを感じた。(中略)どんな風もそれを消すことはできない、決してあきらめない光だった。(P.444)

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苦難の中にあってもやっぱりインガルス一家の暮らしは力強く前向きで、ローラたちより100年以上未来に生きる私たちの心にも明るい光を点します。

さて、そんなローラたちの冬の暮らしから、かあさんのパイをご紹介しましょう。とうさんがアップルパイと間違えたそれの材料は、なんと青いカボチャ! 熟する前に霜にやられてしまった若いカボチャに、かあさんが魔法をかけるのです。物語の中にはぜひとも実践してみたいレシピも紹介されていますが、今回はかあさんの工夫を参考に、ひと味違うパンプキンパイを作りました。熱い紅茶と一緒に、冬の読書のお供にどうぞ。

『長い冬』L・I・ワイルダー著、谷口由美子訳(岩波少年文庫) ウィスコンシンからカンザス、ミネソタと移住してきたローラの一家は、ついにサウスダコタで農地を手に入れる。しかし、とんでもなく厳しい冬が訪れ……。タイトルどおりの長い冬の暮らしにはシリーズの他の物語にはない重さもあるけれど、やがて吹雪がやみ春がやって来たときの、みずみずしく喜びに満ちたシーンが印象的。「5月のクリスマスか! すばらしい。まるで断食していたようなひどい冬の後で、ごちそうが食べられるとはね。」

パンプキンパイ(8cmくらいの丸型パイ6個分)

カボチャ・・・200g
バター・・・小さじ1/2
メープルシロップ・・・小さじ2
サワークリーム・・・大さじ2程度
冷凍パイシート(20cm角くらい)・・・3枚
卵黄・・・1個分

1)カボチャの準備。カボチャは種をとり、皮の硬いところは包丁で削って食べやすい幅で薄切りにする。フライパンを弱火にかけてバターを溶かし、カボチャを入れて軽く炒め、蓋をして5分蒸し焼きに。メープルシロップを入れて中火にし、焦げないように全体にからめて火を止める。カボチャの準備の間にオーブンを200℃に温めておく。

2)生地の準備。土台、ふた、縁飾りを作る。冷凍パイシートを10cmくらいの丸型で抜く。丸く抜いた残りのパイシートは7mm幅くらいのひも状に切っておく(これはパイのふたの縁になります)。丸く抜いたものの半分は、5mm幅くらいで切り込みを入れておく(縁まで切ってしまわないように。これがふたになります)。パイ生地は室温に戻りすぎると扱いづらいので、型を抜いたらこまめに冷凍室に戻して冷やしながら作業する。

3)カボチャを詰める。飾り切りしていないパイ生地を天板に並べ、サワークリームを小さじ1くらいずつ乗せる。その上に1のカボチャを均等に分けてのせる。卵黄に水少々を加えてよくといたものをパイ生地の縁に塗り、切り込みを入れたふたをかぶせ、周囲を指で軽く押してふたをする。表面全体に卵黄を塗り、ひも状に切ったパイ生地を縁にぐるっとのせ、その上をフォークの背を使って押さえる。縁飾りの上にも卵黄を塗る。

4)焼く。温まったオーブンに3を入れ、200℃で15分くらい、焼き色がついてきたら180℃に下げてさらに15分くらい焼いて、できあがり。

POINT パイのバターの香りとほんのり甘いカボチャのすき間からサワークリームの爽やかさをちらりとのぞかせました。丸型がなければ、包丁で四角や三角に切ってもよいですし、写真のようにふたをしないで縁だけつけてカボチャを見せる仕上げでも。
Photograph: Shinsaku Kato
Food & Recipe: Kiyoe Yamasaki
Styling: Reiko Ogino
Edit & Text: Sachiko Kawase
DATE 2017.01.10
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