08『長い冬』かあさんの工夫でびっくりおいしいパンプキンパイ

子どもと一緒に読んで作って食べたい「おいしいおはなし」。今回は、アメリカの手作りの暮らしを味わって。

時代が変わっても変わらないもの

アメリカが今のようなカタチになる前はどんなだったのか? ということを知るヒントを探すなら、ローラ・インガルス・ワイルダーの「小さな家」シリーズを読んでみてはいかがでしょう? アメリカ西部開拓時代を舞台にした著者の自伝的物語で、主人公ローラの一家は農地を求めて開拓地を移住していきます。

この物語の魅力は、生き生きと描かれる開拓時代の暮らし。特にローラたちの暮らしを彩る手しごとの数々――ペチコートの裾につけるレース飾りやベッドをおおうキルト、親戚も集まって総出で作るソーセージや塩漬け豚、カエデの樹液を集めて作るメープルシュガー、とうさんがつくる家――に憧れを抱いて読んだ人は少なくないのではないでしょうか。

シリーズ6冊目の『長い冬』で描かれるのは、過酷な冬の暮らしです。ヶ月にも及ぶ寒波が訪れ、ローラたち一家は手に入れた農地の近くの町で冬を越すことに。しかし雪のため鉄道が止まり、日用品や食料の供給が途絶えてしまうのです。当たり前にあった便利な暮らしが滞り、食料も燃料も不足してしまった中で、とうさんとかあさんは、種小麦をコーヒーミルで挽いてパンを焼いたり、石炭や薪の代わりにわらをよって薪みたいな棒を作ったり、ボタンと端切れと機械油でランプを作ったり、次々と驚きの工夫を編み出します。

それでも、容赦なく吹雪は町をおおい、ローラはもうこの世界から春が消えてしまってしまったのではないかと絶望的な気分になります。すると、とうさんが言うのです。

***

「いずれきっとやむんだ。しかし、わたしらは負けない。やられてたまるもんか。決してあきらめないぞ」

 それを聞いて、ローラの心はぽっと暖まった。ほんのぽっちりだけど、はっきりと暖かさを感じた。(中略)どんな風もそれを消すことはできない、決してあきらめない光だった。(P.444)

***

苦難の中にあってもやっぱりインガルス一家の暮らしは力強く前向きで、ローラたちより100年以上未来に生きる私たちの心にも明るい光を点します。

さて、そんなローラたちの冬の暮らしから、かあさんのパイをご紹介しましょう。とうさんがアップルパイと間違えたそれの材料は、なんと青いカボチャ! 熟する前に霜にやられてしまった若いカボチャに、かあさんが魔法をかけるのです。物語の中にはぜひとも実践してみたいレシピも紹介されていますが、今回はかあさんの工夫を参考に、ひと味違うパンプキンパイを作りました。熱い紅茶と一緒に、冬の読書のお供にどうぞ。

『長い冬』L・I・ワイルダー著、谷口由美子訳(岩波少年文庫) ウィスコンシンからカンザス、ミネソタと移住してきたローラの一家は、ついにサウスダコタで農地を手に入れる。しかし、とんでもなく厳しい冬が訪れ……。タイトルどおりの長い冬の暮らしにはシリーズの他の物語にはない重さもあるけれど、やがて吹雪がやみ春がやって来たときの、みずみずしく喜びに満ちたシーンが印象的。「5月のクリスマスか! すばらしい。まるで断食していたようなひどい冬の後で、ごちそうが食べられるとはね。」

MilK JAPONの
iPhoneアプリが登場

マガジンと連動したスペシャルなARコンテンツが楽しめたり、
ウェブのイベント情報をいち早くお届けできるアプリです。

MilK JAPON #34
Spring-Summer 2017