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DATE 2018.04.23

映画『オー・ルーシー!』平栁敦子監督インタビュー。「ジャッキー・チェンに憧れていた」

「自分をさらけ出して、自由になりたい」。願望や欲望に忠実に生きること、自分らしくある為に何をすべきなのかを問いかける映画『オー・ルーシー!』が4月28日(土)から公開される。

 

監督は、今ハリウッドや世界の映画シーンで注目を集める平栁敦子監督。日本人でありながらサンフランシスコを拠点に映画製作を行いつつ、二児の母として子育てもしている。来日した監督に映画が生まれたきっかけ、またサンフランシスコでの暮らしについて話を伺った。全身をダークトーンでまとめ、クールな印象の平栁監督。「ジャッキー・チェンに憧れていたんです」と映画監督を目指したきっかけを話してくれた。

「アメリカに留学したのは17歳の頃。当時ハリウッドに日本人俳優がいなくて、アジア系アメリカ人が訳の分からない日本語を話して演じている状況で『じゃあ、私が行ってハリウッドを変えてやる!』というような若気の至りです(笑)。演技が好きだった訳じゃないですが、8歳くらいからジャッキー・チェンに憧れて、実はアクション俳優を目指していました。ジャッキーは自分でシナリオを書いて演じて監督もするので、そんな風になりたかった。また小さい頃から学芸会で出し物をしたり演劇のストーリーを作って演じたり、漫画や絵を描いたりするのも好きで、空想の世界が好きでしたね」

―運動も大好きで、兄がいたこともあり、男の子に混ざってサッカーをしていた。「なんで男の子しかできないの?」という“不公平さ”“アンフェアネス”が嫌いで、とても正義感が強かったことも俳優を目指したことにつながっているそう。第一児出産後、大学院へ進み修了作品として製作したのが22分間の短編版『Oh Lucy!』で、その長編作品が今作『オー・ルーシー!』だ。

 

ストーリーは、アラフォーの独身OL節子が英会話講師に恋をし、彼を追いかけアメリカに渡り、自分の本能や欲望に目覚めていく物語だ。がむしゃらに突き進む主人公の姿は、ひたむきで一生懸命、少しイタくて笑える。ユーモアたっぷりの人間ドラマは、現代を生きる全ての人に刺さる。

 

「主人公節子のモデルは、今までに会った日本人、私自身の経験も含まれています。私が6歳の頃、学校に一言もしゃべらない女の子がいたんです。最初は、しゃべらないから先生も指名しなかったのですが、ある日しびれを切らせて怒ったことがありました。その後私が17歳で留学した時、英語がしゃべれず、その子のように静かになりました。その時に、『ああ、一言をしゃべるのがすごく怖かったんだな』と思いました。そんな経験がこの映画につながっています。普段声を出さないような人の声を伝えたいと思ったんです。

私たち日本人はアメリカに行くと、アメリカが持つシンボル、魔法のようなものにかけられ、自分が解放され自由になれるような気がします。例えば、最初はもの静かだった日本人が、3年後にはタトゥーだらけになって帰った人もいます。英語をしゃべることで、急にオープンになったりフレンドリーになる人もいますよね? アメリカは若い国で移民国家なので、当たり前という概念がほとんどありません。ゼロから始まることが多いので、『当たり前でしょ』と言わずに、常に何かクエスチョンするオープンな姿勢があるような気がします。私はそこに良いことがたくさんあると思っています」

 

―主人公節子役に寺島しのぶさん、他にも南果歩さん、忽那汐里さん、役所広司さん、ジョシュ・ハートネットと日米を代表する豪華キャストも見どころのひとつ。つい見入ってしまう自然な演技と演出は、監督が「役者がその一瞬、その場で出す」演技にこだわっていたから生まれたものだ。

 

「リハーサルは一切しませんでしたが、“ちょっとおかしい”“演技が臭い”時はすぐに分かりますね。私が俳優をやっていた経験からかもしれませんが、『本当はこっちに動きたい』『こう言いたい』という本音と演技の違和感をすぐに感じとることができます。

寺島(しのぶ)さんは、女優なのに醜くなることを恐れない人。過去の作品を観た時に、直感で『彼女しかいない』と思いました。私が思い描くものと彼女が描くものがぴったり合っていたみたいで、私が考える節子を素晴らしい直感で演じてくれました。寺島さんは結婚相手がフランス人でお子さんはダブル。私と重なる部分も多いせいか、人間的にも似ていて波長がとても合いました」

 

―現在は、サンフランシスコにご主人と10歳の娘さん、5歳の息子さんと暮らし、映画製作と子育てを両立する平栁監督。忙しい日々の中で大切にしていること、日本で子育てをするお母さんに感じていることを聞いた。

 

「娘は3時間でもお絵描きできる静かなタイプですが、息子はアクティブな性格でマシン好き。洗濯機や扇風機、回るものがやたら大好きで、『モーターが見たい!』とおもちゃも分解しちゃう(笑)。息子はエネルギーがあり落ち着きがないので、それが少しでも抑えられるよう、早く寝かせることと、メディア系を見させないように気をつけています。もちろん、飛行機やレストランなどどうしても静かにしていなければならない場所では、必要に応じて見せることもあります。0か100は良くないしできない。一概にメディアを見させるなとは言いませんが、その子に応じてルールを決めて、バランスをとることが大事だと思います。

日本のお母さんは、『母親はこうじゃなきゃいけない』『いい母親はこうだ』とか、理想の母親像が大き過ぎて大変だと思う。私も知らないうちにそれと葛藤している時があります。プレッシャーも多いけど、型にはまらなくていい。子どもが求めているのはもっとシンプルで、お母さんからアテンションをもらって、愛されているのを感じられるだけで十分なんです。

 

社会も母親に求めることが多すぎる。自分を追い込まずに、自分を許すことをして欲しいと思います。そのためにも、自分だけの時間を毎日15分でいいから作る。私もだいたいイライラしてしまう時は、自分の時間がない時です。一人でコーヒーを飲むでもいいし、読書するのもいい。映画を観るのもいいし、そういう意味でも『オー・ルーシー!』を是非(笑)。15分では無理ですが(笑)お母さんに観て欲しいですね」