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DATE 2018.04.06

映画『女は二度決断する』偽りなき決断に圧倒される、ラスト10分の葛藤

「家族を突然の悲劇によって奪われたら……」。それが病気や自分で起こした事故ならまだしも、殺人やテロなど、他者が意図的に仕向けたものだったら。怒りや悲しみを、どう消化したら良いのか。

 

4月14日から公開される映画『女は二度決断する』では、主人公の女性がテロリストに愛する夫と息子を奪われ、ある決断を下す社会派ヒューマンドラマだ。

移民が多い国ドイツで起こった実際の事件に着想を得て作られたこの映画は、「自分だったらどうする?」という疑問を問いかけ、観た人すべてに強烈な余韻を残す作品だ。ラスト10分、家族を失った主人公が繰り広げる心の葛藤に、あなたは何を感じるだろうか。

 

オープニングは、幸せに包まれた夫婦の結婚シーンから始まる。ドイツ人女性のカティヤは、かつて麻薬の売人をしていたが今はコンサルタント業を営むトルコ人のヌーリと結婚する。愛息ロッコにも恵まれ、幸せな毎日を過ごしていたある日、ヌーリが働く事務所の前で爆発事件が起こった。

カティヤはロッコを事務所に連れて行った時、事務所の前に荷台付きの自転車に鍵をかけずに置いていく不審な女性を見かけていた。DNA検査の結果、被害者がヌーリとロッコだと判明し、息もできないほどの絶望に暮れるカティヤ。

 

警官に事情聴取を受け、カティヤは「自転車を置いていった女が犯人だ!」と事件当日のことを思い出すが、警官は予想外の質問をする。「夫は熱心なイスラム教徒か?」「クルド人か?」「敵はいたかどうか?」。被害者のはずが、まるで容疑者のような尋問を受け、カティヤは衝撃を受ける。警官は、トルコ人のヌーリが裏組織とつながっていて、それが原因で狙われたのではないかと疑っていた。

カティヤは、外国人を狙った極右グループ・ネオナチの仕業に違いないと確信する。悲しみから自殺を試みるカティヤの元に、犯人が捕まったと知らせが入る。予想通り、犯人はネオナチの若い男女のカップルだった。「まだ死ねない、犯人を投獄するまでは」とカティヤは奮起し、裁判は始まる。

 

ストーリーは、3つの章から構成されている。事件から裁判が始まるまでの「家族」、裁判が始まってから判決が出るまでの「正義」、判決が出た後から決断を下すまでの「海」。「家族」では絶望と悲しみに満ちた暗雲立ちこめる世界、「正義」では法廷の客観的で冷静な世界、「海」では判決に絶望しつつも、新たな始まりを感じさせる世界が淡々と描かれている。

 

とりわけ印象的なのが、「海」の章。“疑わしきは罰せず”“グレーは裁かない”という理由から、無罪になった容疑者カップルはギリシヤへと旅立つ。判決に納得のいかないカティヤは二人を追いかけるが、美しい穏やかな海とは対照的に、カティヤの心は晴れず、怒りと憤りに包まれている。そして迎えるラスト10分、正義と復讐、道徳心が入り混ざる中、カティヤは決断を下すのだった。

「自分ならどうする?」「決断は正しかったのか?」と問いかけた時、正直自分の答えは出せなかった。唯一真実を確信できるのが、決断してからも葛藤し続けるカティヤの生き様だ。生きることの理想と現実、復讐に意味がないことを知りながらも迷う姿に、胸が引き裂かれそうになる。途方もない悲しみの先にある一筋の光をつかんだ時、カティヤの心の中はこれまでになく穏やかだったのかもしれない。

 

観終わった後に、どんな感想を持つだろう。母であり、妻であり、一人の人間である主人公の偽りなき決断に心を揺さぶられる映画『女は二度決断する』を、ぜひ観てみて欲しい。