1人のバレエ少女の成長を、現代的かつアーティスティックに描いた感動作『ポリーナ、私を踊る』

子どもの習い事には、悩みが尽きものだ。「やめたいと言っているが、続けさせるにはどうしたら良いか」「やりたいことが1カ月ごとに変わる。どうやって、習い事を選べばいい?」「そもそも何を習わせるのが良い?」など、親同士で話していると話は止まらない。

 

10月28日から公開される『ポリーナ、私を踊る』は、そんな親たちにぜひ観てほしい映画だ。1人のバレエ少女が、運命に翻弄されながら、葛藤しつつ成長していく姿を描いている。バレエ以外の習い事やスポーツに没頭する、10代の子どもたちにもぜひおすすめしたい作品だ。

主人公は、ロシアに住む少女ポリーナ。4歳からバレエをはじめ、ボリショイ・バレエ団のバレリーナを目指し、貧しい家庭ながら厳しい練習を重ねて鍛え上げられていく。有望なバレリーナに成長したポリーナは、ボリショイ・バレエ団のオーディションに合格する。

 

しかし入団を目前にしたある日、コンテンポラリーダンスとの出会いに、ポリーナの信念は揺らぐ。自分の中にわき上がる「やってみたい」という感情を抑えられず、両親の反対を押し切って、恋人アドリアンと南フランスのコンテンポラリーカンパニーへ行くことを決意する。

 

新天地での暮らしは、挑戦と、夢と愛に葛藤する日々だった。気持ちが空回りしてしまったポリーナは、練習中に足にケガを負ってしまう。恋人ともすれ違うようになり、指導者から「何も感じられない」と指摘され、役から外されてしまう。全てを失ったポリーナは、新たな場所を探し、ベルギーのアントワープへと旅立つ。

自分の力だけで生きることを決めたポリーナは、仕事やオーディション探しに明け暮れる。日銭もままならないどん底の生活の中、やっとバーのバイトが決まり、再びダンスを始めることに。そんなある日、子どもたちにダンスを教える舞踏家カールに出会う。彼の即興のダンスに魅了されたポリーナは、彼と一緒に踊ることを通じて、やっと自分らしく踊る喜びを見つける。

 

一番の見どころは、美しく叙情的なラストシーンだ。カールと続けた稽古の集大成ともいえる、見事なステージは息つく暇もないほど圧倒される。ぴたりと合った二人の呼吸、一体感、体全体からほとばしるパッション。既存のダンスの概念にこだわらず、自由でたおやかで豊かな表現力に、ポリーナの生きざま全てが凝縮されているように見える。ポリーナの今後を物語るような、悠々とした船出のシーンのようにも思える。

今作の監督に起用されているのが、バレエダンサーであり振付家としても世界的に活躍するアンジュラン・プレルジョカージュ。リアリティと躍動感あふれるダンスシーンは、プレルジョカージュ無くして実現できなかっただろう。

 

ポリーナの人生は、決して完璧ではない。ボリショイ・バレエ団に行かなかったことが転落のはじまりと言う人もいるだろうし、親の期待を裏切ったこと、恋人と駆け落ち寸前のようにフランスへ旅立ったことも失敗だったかもしれない。

 

しかし、どの岐路にも、ポリーナの強く固い信念があった。「親に言われたから」「まわりの期待を裏切れないから」と流されずに、自分の気持ちに素直に決めている。結果、失敗したとしても責任を取るのは自分。誰も攻められないし、自分で何とかせねばならないから、次にやることは簡単。前を向いて進むしかない。この強さが、今生きる子どもたちには必要ではないかと思う。

没頭できる習い事やスポーツがあるのは素晴らしい。しかし、人生は1本の道でなく、いくつもの分かれ道があり、選択をしながら生きていく。ひとつの習い事を考えた時に、「この子には向いているのかどうか」は親なら、すぐに分かると思うし、向いてもいないのに「やめたい」ならそれはやめるのが正解だと思う。

 

熱中していたことが、ケガや家庭の事情などで中断することもある。絶望するかもしれないが、その先にも人生は続き、選択を繰り返す。挫折や中断も、その先に続く人生の過程であり、成功の通過点なのだ。

 

迷っても落ち込んでも、どん底からでも力強く生きるポリーナ。そんな生きるパッションをぜひ感じ取ってほしい。

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